2530字

 二年ぶりにシネマ06で映画を観た。二年前はたぶん、クエンティン・タランティーノ週間みたいなので、タランティーノに関する映画を七日間朝から晩まで映していて、それで『フォー・ルームス』と『デス・プルーフinグラインドハウス』を観た。『フォー・ルームス』を昼前に観て、併設された喫茶店でデミグラスではない茶色のソースがかかったオムライスを食べて、コーラとオレンジジュースを飲んで、十四時か十五時からの『デス・プルーフinグラインドハウス』を観た。話の筋は思い出せない。話の筋なんてなかったのかもしれない。色や動きの激しさだけは思い出せる。そのときも今もシアター3で、前から五列目の真ん中に座った。ポップコーンもジュースもなし。
 それで今回はグザヴィエ・ドラン特集ということで、二日間延々グザヴィエ・ドランの映画がやっていて、その二日目の昼の『エレファント・ソング』を観た。ドラン監督の作品はドラン本人が主演で出ているのが好きで、ほとんどそれ以外観たことがない。今回も彼が主演で、動いているグザヴィエ・ドランの動きにずっと目がいって、それで、満島ひかりが動いている時にも目がずっと動きを追っていることを思い出させた。それはでも、今思い出したことで、映画を観ているあいだは「グザヴィエ・ドラン、ああ、グザヴィエ・ドラン、ああ」と思っていただけで、以前に一度観て今回が二度目だけど、話はもうあまり思い出せない。
 それから喫茶店には行かず、商店街の方へ歩いて、月に二回か三回行くカフェで昼定食とアイスカフェラテを頼んで、持ってきた『漂流船』を開いた。昼定食は、牛肉と玉ねぎとじゃがいもの煮物、肉じゃがと、鮮やかなオレンジ色の魚の焼き物、焼き鮭と、わかめと小さいぶつ切りのタコを酢で和えたもの、酢の物で白ご飯が大盛り無料で、大盛りにして、カフェラテは食べ終わってから持ってきてもらうようにした。
 あと全体で十二口くらいのときにガトーショコラを頼んで、九口で食べ終わったので、また『漂流船』を開いた。『漂流船』は今のところ同じページを何度も読むに留まり、先へ進まない。
 ガトーショコラとアイスカフェラテを、二切れ一口を繰り返して、どちらも半分くらいで『アウトブリード』を読み始めた。ざくざく読める日と一行二行を何度も何度も読み返す日があり、そりゃ読んでる部分が違うんだから当たり前だろと思いつつも、同じ本、同じ章題中でこれだけの違い、と書いて、ここでいう「これ」はざくざく読めることと一行二行を何度も読むことなんだけど、本当のことを言えば、これだけと書きながらそのことは頭になく、あるのは読んでいる最中の頭や体の感触で、だから、これだけというより、あれだけと書くほうが正確なのだけど、この文章上あれだけと書くことの正誤が分からないし、iPhoneで書いていて、三行上のことを「あれ」と書くのは近過ぎると思った。それで、同じ本、同じ章題中であれだけ読み心地、読み方が変わるというのは不思議に不思議で、何冊かの本を併読しているみたいで得した気分にすらなる。

 ガトーショコラとアイスカフェラテを終えて、歩きながらtofubeatsの『River』とBishop Briggsの『RIVER』聴いて、折坂悠太の『角部屋』の途中でシネマ06に着いた。次の上映まで時間があったので、というか歩きながら音楽を聴きたかったので、次のに間に合っても間に合わなくてもいいやと思いながら、そこを通り過ぎた。
 堤防を上がって川でも眺めるかと思いながら巻いてきた煙草に火をつけて、堤防に上がる坂道の方へ足を向けた。『角部屋』が終わってPanic! At The Discoの『Say Amen』と『Death of a Bachelor』も終わって、折坂悠太の『きゅびずむ』がかかったあたりで堤防の上に出た。かけあしで降って川沿いの濡れた様子のない大きめの石に座って、新しい煙草に火をつけて、石ころを投げ入れたり水切りしたりしながら、同じプレイリストを聴き続けた。
 しばらくして王舟の『とうもろこし畑』に変えて、鈴木雅之の『さよならいとしのBaby Blues』を聴いて、さよならいとしのって字面いいなと思いながら新しい煙草に火をつけかけて、立ち上がってお尻のとこをはたいてから火をつけてシネマ06まで戻った。

『エレファント・ソング』と同じスクリーンで、同じ席を取って『マイ・マザー』を観た。またドランが主演で、「ドラン、あああ。ドラン・・・」と思いながら見終わって「グザヴィエ・ドラン」と思ってから立ち上がって、煙草をくわえたところで、ひやっとしてポッケに戻して、併設の喫茶店の喫煙席に座ってから改めて煙草に火をつけた。
 ここのコーヒーは多分パックから注いでいて、美味しくもなく飲むと体調が悪くなるので、コーヒーを一つと言ってから、あ、やっぱりコーラでお願いします、すみませんと言って、煙草を巻いた。ここは窓張になっていて、シネマ06の入り口の門みたいなところも二つしかないチケットカウンターも五つあるスクリーンに続く二つの階段も全部見える。今、チケットカウンターには同じ歳くらいの女の人が座っていて、小さい子を連れた父親らしき男の人がチケットを買っている。グザヴィエ・ドランの一体どの映画を親子で観るのか、と思ってから、別に明日明後日のチケットを買ってることもあるかと思って、でも子の小さい親子で今からグザヴィエ・ドランを観て欲しいと思って、それは映画のメッセージや何やかやと関係なく、その組み合わせの異様さがおもしろく感じたからで、だから彼らにはこれからグザヴィエ・ドランの『トム・アット・ザ・ファーム』を観て欲しい、と思っていつのまにかあったコーラを二口飲んだ。
 帰るか彼らとともに『トム・アット・ザ・ファーム』を観るか考え、でも完全にお金を使い過ぎていて、学生割引で鑑賞料金が千円になっていても、完全にお金を使い過ぎていて、それで、非常に惜しいと思いながら堤防に上がって川沿いを歩きながら、遠回りしながら、というか全く帰路ではない道で、でも帰路で、その帰路を辿って家へ帰った。