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 やっぱり帰って来た感じがしないので書き残す作業で家に帰る。

3/1
 まずは小樽まで行って、下る最中に札幌や函館、盛岡や仙台、東京を練り歩いて帰ろう!というような軽い予定だったのが、当日の明け方のやり取りで東京のみに変更となった。なんとなく調べて出てきたワタリウム美術館と東京都庭園美術館での展示を観に行くことに。

 旅をする前予定を決めるまで行かずとも、選択肢をたくさん考えておくのが楽しい。こっち行ってその近くのあそこ寄って、それから電車かバスに乗ってここ行けたら行こう、お腹空いてたらこっちかこっちでもいし、空いてなかったら近場のカフェか何かで何か飲もうみたいな、わっと放射状に広がった適当な予定もどきを。

 それでまあいつも通り同行する友人が寝坊したので、少し眠り、夕方に駅で合流。どんだけ同じもの食べるんだ?って感じのお馴染みのテキサスコンボを食べ、20分ないくらいのPAへ。ここ以南ではSAクラスのPAだけど地図がなく、広い範囲を一度に目に入れるのに向いてないGoogle Mapsを睨みつつ、ああだこうだ向かう場所を決める。こういうときいつも、八割方僕しか提案しない、「〇〇だと多分考える時間が増えて良くないだろうから、もうちょっと広い範囲で行こう」とか「このゾーンを抜けるために、せめてこの規模のSAに行こう」とか、それで毎回最後はめんどくさくなって「こっちかこっち、どうする?」と委ねる。

 一時間足らずで乗せていただけることになり、三重県は御在所PAへ。南下するときとは違ってPAの施設が充実している。
 名物らしい安永餅二本と無料の温かい緑茶を休憩がてら摂取して口の中で婆ちゃんの家を思いだす。かなり小さいころに何度か遊びに行ったことがある婆ちゃんの家で、炬燵の一面が壁にくっついていて、その向かいから入って暖まりながら天井を眺めていた、ことを思い出した。ありがとう安永餅と温緑茶。

 休憩とヒッチを繰り返す。夜中を過ぎても車の流れが滞らず、二人して「いつ切り上げていいか分からなくなるな」と言っていた。別に切り上げて寝りゃいいのにね、とは思いつつ、やっぱり惜しい気がしてなかなか切り上げられない。

 結局3時過ぎくらいに諦めて椅子寝。

3/2
 8時頃に目覚める。バータコを取り込み、眠っていた席の背後で一時間前に開いたスタバのホットラテを流し込む。
 休憩多めでも10時前には男女一組の車に乗せていただき、静岡県は浜名湖SAへ。初めての上下集約型でかなりわくわくする。東京でおすすめの食べ物屋を教えてくださった。どこへも行かなかったけれど。わりと今までにないくらい踏み込んだ話もしつつ楽しく過ごせた。お二人もそうだといいなと思う。
  サービスエリア、パーキングエリアに到着するとまずはバータコをしばくのが前回からの恒例になりつつある。ざっと敷地内を見て芝生のエリアをうろうろする。三ケ日みかんを三つ100円で買い芝生エリアのベンチで食し、鼻や目の異変に気付き始める。
 浜松餃子と広島焼きを昼食に摂り、長めの休憩を過ごす。花粉が少なければもっと長居したかった。広島の宮島SAと同タイプの心地好さで、意味もなくまた訪れたい。

 出店やレストランの前は人が多いけれどそれは上下集約だからで、なし。駐車場が結構な数に分かれているので基本的に一列目の車の運転手の目にしか入らないここは、なし。というので、三つか四つの分岐が交わるところに立つ。
 時計を見ていないので分からないけれど、早くに声をかけていただいた。その方が仰るには、浜名湖SAには土産品だけを買いに来ていて、一度前を通り過ぎて降りたんだけど、別に予定ないしってことで戻ってきた、どこまで行くの?海老名?、じゃあ、行こっか!
 超過してくださる方に出会うたびに、本当に本当に本当に一体全体どうしてなのーーーー???!!!と思う。
 福山雅治さんのラジオを聴きながら和気藹々と進み、富士川SAで小休憩を取る。ここで初めて海老名SAってあとどのくらい?とのことで、100キロは切っていて、それでもここまでで既に100キロ以上あって、切っているとは言ってもまだ90キロ以上はあるのに、ああもうそんなもんか、とのことで驚く。距離感が分からないのに乗せてくださっていたことにこのタイミングで驚く。
 ぼちぼち色んな話をしていると、それじゃあ海老名の駅まで送るよと言ってくださり、もう何度もこういうことを書いているけれど、どこまで甘えてどこで断ればいいのか分からない。

 結局は海老名駅まで送っていただき、別れの挨拶を済ませると、かなりあっさり去って行き、痺れる。

 代々木上原駅まで電車に乗り、駅近くの大黒湯へ。がちゃがちゃとした銭湯で楽しい。湯を浴びることの気持ち良さを口々に語り、湯に浸かってたった二日、まだ二日目の夕方になったばかりの疲れを癒した。

 そこからFuglenへ行ってテラス席で巻きりながらホットのカフェラテを飲んだ。東京へ来るたびに最初に訪れている気がするけれど、恐らくそんなことはなくて、その都度その都度別のところへ行ってるはずで、でも多分何回かはそうしていてだから、旅のようやっとの始まりとして友人と二人で来たかった。毎度お馴染みの味で、素直に、凄いことだよなあと思い体内を癒す。
あまりにも寒いので、
「驚くほど寒くないな」
「な、全く寒くない」
「逆にもうちょい寒くなってくれないと困るな」
「な、ちょうど寒さだけない」
などと言い合って誤魔化しながらゆっくり楽しんだ。

 ファストフードほどジャンクで人を感じないものじゃないものを食べたくなったのでスライスへ行くことにして、SPBSによって物色後、チーズスライスをグリーンタバスコまみれにして食べた。うん、美味しいって日とうんめえ!!!って日の差が激しい気がするのは体調やらその前に食べたり飲んだりしたもののせいなのかな。

 とりあえず初日はいつも通り動こうと蔦屋へ行って、ぐったりに近いまったりでしばらく過ごす。スタバのドリップコーヒーを飲んで体を震わせながら、今日の夜はいったいどこでどう過ごそうかと持ちかけ「ここのカラオケはこのパックでこのくらい、ここのネカフェはこれくらい、この漫画喫茶はこのくらい、安さだとここ、どうする?」と今までに何百回と繰り返したやり取りの末、漫画喫茶マンボーへ行くことに。

3/3
 お互いあまり眠れないままで退店し、今度はフラットシートにしようと決意を固める。一つのロッカーに二人のリュックを詰める。
 お腹が空いていたのでそのままバーガーキングへ行ってワッパーJr.とコーラゼロを吸い込む。寝不足の胃腸を、バーガーは絶対に食べる!というのを加味しつつ労ってジュニアにしたけれど全く足りない。
 食べ終わってしばらく煙草を吸い続け、爆笑しながら、仮眠を取ろうとしながら、でも結局最後はBGMの巨大さに辟易して店を出た。

 パンが食べたいと言うので調べて「ここは?」っちゅうことで青山のbreadworksへ。クロワッサンと白桃ジュースを吸収する。食べづらいものが大嫌いだけどクロワッサンは好きで、でもやっぱり鬱陶しくて、白桃ジュースはただただかなり美味しかった。
 この時点で二人ともパキパキなっていて眼球がどんどん奥へ奥へめり込んでいって黒い穴ぼこを向かい合わせに小さめの声でだらだらと話していた。
 途中で眠気が消えたのでこのままカフェインをぶち込んでパキパキ期間を伸ばそうとブルーボトルコーヒーへ。ホットのカフェラテを飲む。思えば東京にいる間、発酵したような後味というか香りというか、そういうのが残るカフェラテを好んで飲んでいる気がする。ベアポンドしかりフグレンしかりブルーボトルしかり。

 かなりパキパキしてきたのでそのまま目的の一つであるワタリウム美術館へ。浅野忠信『TADANOBU ASANO 3634展』を観に来た。
「3634枚なくて良かったな」と言いつつ700点はあって、終わってから吐くかもなと言いつつ、意外に無事に時に笑いながら観てまわることができた。
 知らないからこそ言えることなんだけど、浅野忠信さんの動きのある絵を見ていると、写真みたいだなと思い始めて、それはアンリ・カルティエ=ブレッソンの最も有名なと言っていいだろう『サン=ラザール駅裏、パリ』を連想させ、この写真のというか、要は彼の「決定的瞬間」的な、運動中の対象を切り取る手法というか構図というか、そういったことを思い出した。とにかく影が書き込まれた絵に目を引かれた。

 それから少し歩いたところにあるSHAKE SHACKへ。何度も行こうとしてはチャンスを逃してきてようやく食べられたシャックバーガーとポテトは、軽めだけど本当に感動して、それはチェーンじゃないハンバーガー屋のだいたい1200円を超えてくるようなバーガーが美味いのは当たり前だろ!と日頃考えているからで、わりと庶民的なチェーンで美味いバーガーを食べさせてくれよ!と願っているからで、マックやバーガーキングやウェンディーズに比べれば高いけれど、結局セットにすればどこでも1000円近くいくんだし、それならめちゃくちゃ美味いバーガーに710円払って、なんかクセになるフライに300円払う方がいいだろうよ、と俺はいったいいつまで読点でつないでいくのか。
 まあとにかくさらっと食べられるハンバーガーの中で頂点!ポテトはマックが頂点!と思いながら寝不足も合わせておかしな高揚感に包まれていた。アイスレモネードは家で作った方が好みで、そういえば外で、これは美味い!と思ったレモネードないよなと不思議に思った。

 乃木坂まで電車に乗り、国立新美術館へ。前日の蔦屋で手に取ったイケムラレイコさんの画集にぐらっときて、メモしていた名前を朝に検索してみると、ちょうど東京にいる間に開催されているということで訪れた。
 言わずもがな素晴らしかった。『メメント・モリ』は近くで見たかったのだけど、近付けず、それは近付いてはいけないと思ったからで、失礼にあたると思ったからで、思ってしまったからには、えいっと無理矢理前に進むことのできる体を頭で、ここまでなら大丈夫だと思ったんだろ?と言い聞かせないといけず、少し遠くから眺めているあいだ息苦しかった。眼窩の暗さや影で朧げにしか見えない朽ちかけた身体の荒い線が遠くから見ていると本当の死体に見えて、本当の死体に見えることがこの作品にとって良いことかは分からないけれど、見えたからこそ近付かず、近付かなかったからこそ最後まで本当の死体に見えたのかもしれず、俺は近付いて、本当の死体に見えなくなったあとにある発見を今後一生逃したのかもしれない。だからなんだ?
 紙に木炭で描かれた絵はどれも目にとまり、特に『満月』と『子供の顔』は生活していて常に視界に入る場所に飾りたいと思うほど惹かれ、通り過ぎるくらいにさっと見たり、色んな距離でじっと見たり、目を細めたり見開いたり、長い時間その二枚の前で過ごした。

 友人がASOKOを見たいと言うので表参道まで電車で行ってうろうろ。久々にアークティーズも物色してスケボーで怪我したい欲が湧いた。

 そろそろコーヒーを取り込みたくなったのでNO8.BEAR PONDでB.P Latteを注文し、ひとまず休憩。

 こっちの店の店員を見ているとラフでいいよなあと何度も思う。もはや人によっては側から見ていてそわそわするくらい無愛想な人もいて、でもその人は馴染みの人が来ると「ぉおお!」みたいな感じになって、無愛想に接されていた客の何かが彼ら彼女らをそうさせたのかもしれないけれど、その分かりやすいのか分かりにくいのか分からないがあからさまなのが心地好くもある。タトゥーを彫り込んだ人や髭や髪を伸ばした人が多いのも見ていて心が落ち着く。そりゃそうだよねー君は君よねー、だから俺も俺よねー、と思ったか思わないからくらいで毎回思う。そんで洒落てて美味い店に多いよね。どう思いますか?

 それから数時間前に決めていた、今日はハンバーガーデイにする!というのを実現するべくウェンディーズへ。ウェンディーズバーガーとコーラゼロ。全くお腹が空いていないけれど、ガーリックマヨをべらべら付けながら美味しく完食して、煙草を吸い尽くし、またもやマンボーへ。

 フラットシートにしたので快適も快適、今後ヒッチハイク旅か何かで来るときは10H1500円のフラットシート以外泊まる必要ありますか??!??といった気分で、寝転びながら煙草を吸い、シャワーを借り、かなり早くに就寝できた。

3/4
 4時頃に目覚め、5時に退店し、近くのジョナサンへ。焼かれた鶏肉がのったピラフ大盛りを平らげ、何故か喉が渇き続けていたので、水中毒を恐れながら何杯も立て続けに飲んだ。結局潤わなかった。
 提案するのも面倒になっていたので何も言わず、一人で映画を観始めた。あらかじめAmazon Prime VideoでiPadにダウンロードしていた『マンチェスター・バイ・ザ・シー』を観た。 Filmarksでチェックしておいたときは「あー、ミシェル・ウィリアムズ可愛い、可愛いし美しい、ミシェル・ウィリアムズが動いているのを見たい!」くらいの軽さで、観始めてすぐ「ケイシー・アフレック、ケイシー・アフレック、ケイシー・アフレック」といった感じですぐに夢中になった。
 その話からその演技が生まれているんだから切り離せないけれど、とにかく、いい顔の俳優がいい演技をしているのを観たい、観続けたい。
 多くの邦画を最後まで観れない理由の六割が話の面白くなさで、何でこんないい俳優をつかってこうなるの!!!!と思い、あとの四割は編集で、何でこんなふざけたCGを?どうしてこんな荘厳な音楽をチャチに使うの?どうして?いい俳優がいい演技してるのにどうして?何でそこで切っちゃうの?どうして???と勝手な客以外の何者でもなく、でも同じ俳優で別の監督が撮ることはないだろうことを思うと遣り切れない気持ちになり、こんな遣り切れない気持ちにさせるのは、どうして?というところに収まる。
 終盤のケイシー・アフレックとミシェル・ウィリアムズの会話のシーンを観て涙が滲んでしまった。ベン・アフレックが頭の片隅にいたのか『グッド・ウィル・ハンティング』の出ていないのに最後あたりのロビン・ウィリアムズとマット・デイモンのシーンを思い出しつつ、この映画に限らず、その映画の中でピークのシーンを観ると、字幕付きだけどもこういった和訳がつく元の文章、ショットの構成、俳優の演技、画面の色彩、等々、本当に日本で海外の映画を越える映画って存在したの?存在しているの?存在する?と思ってしまう。

 それで、これだけこっちから何も言わなければ流石に考えてくれているだろうという予想は外れず、タピオカを飲みにTHE ALLEY LUJIAOXIANGへ。前はロイヤルNo9.を飲んだ気がしたので鉄観音にしたのだけど、鉄観音の語感が気持ち良いからか勝手に頭の中で反響していて、前も鉄観音を飲んだ気になってきて、鉄観音鉄観音と思いながら腰が冷え切る階段に座り込んでマイルドホットで体を温めた。香りが強いから苦手な人はギャッ!となりそう、と前も思った気がするから、やっぱり前に飲んだのも鉄観音のかもしれない、いやでも、No9.にしたような朧な記憶もあり、もしかしたら一緒に行った彼女が鉄観音にしていたのかもと思い至り、それで安心したのも束の間、やはり鉄観音の響きが良く、頭の中で反復したせいで、以前にも鉄観音と言った記憶が作られ始め、俺は以前No9.か鉄観音かどちらを飲んだのだろうかと、それはそうといつまで鉄観音鉄観音書くつもりなのか。
 飲み終わってから徒歩6秒のJ.S.CURRYでJ.S.CURRYを食べ、映画が観たくなったのでUPLINK渋谷へ。開演までをTabelaのホットカフェラテで潰し、今度はクスクスとお冷にしようと決めた。
 早めにTabelaを切り上げて煙草を吸っているとあれよあれよと進んで、「買って来てくれるんちゃう」と言っていたら、見知らぬおじさんに携帯灰皿をプレゼントしていただく事態になり、友人と二人で笑っていた。
『ヨーゼフ・ボイスは挑発する』を観た。ボイスの台詞に時折ぐらつきながらも何かが退屈で10分か15分ほど眠った。
 眠りを挟む映画館での映画観賞は趣味と言ってもよく、今回もやはり抜けるように元気になってFuglenへ行くことにして、ゆっくりできたら読む用の本をSPBSへ探しに行った。じっくり見て前田司郎『愛が挟み撃ち』を買いFuglenへ。満席に近く読書を諦めて外の席へ。ホットコーヒーを飲みつつ煙草で体内を燻しつつ話しつつ、寒いながらもなかなか長い時間過ごした。

 代々木八幡駅から南新宿駅まで行ってSHAKE SHACKへ。レモネード無しで昨日と同じものを頼んで堪能し、帰っても機会があればーライブ等で行くことがあればー大阪のSHAKE SHACKへ行くぞー!と決めた。

 それからマンボーのフラットシートへ帰るために渋谷へ。耳栓をなくしていたのでコンビニを三件まわった。ファミマの一角はシャグ屋になっていたので良し、ローソンは奇妙な構造になっていたので良し、ナチュラルローソンは信じていた通り耳栓があり、あんこギッフェリもあったので良し良し良し。
 もう慣れ親しんだ感覚のフラットシートに座り、小さな机でシャグファミマ宮益坂店にて一つ50円で購入した七種類の葉を巻き分け、そのまま試喫し、そのまま試喫し、そのまま試喫し、そのまま試喫し、そのまま試喫し、そのまま試喫し、そのまま試喫し、45分間で心臓がことこと鳴り始め、試したシャグは全て合わず、自分の心臓に滑車があることが分かっただけの無駄な時間を過ごした。

 シャワーを借りて、すんなりではないが入眠。

3/5
 朝食にあんこギッフェリと栗ほうじ茶を注入し、遅めの入店に合わせて遅めに退店し、渋谷駅から横浜駅へ。ささっと乗り換えて海老名駅へ、どちらの車内も『愛が挟み撃ち』を読んで過ごした。
 駅から海老名SAへ歩き、まずは豚骨ラーメンと明太子ご飯を食べた。非常に無味のラーメンで、明太子ご飯を食べてから啜ると美味い!と感じた。どして?なんで?
 休憩とヒッチを短い間隔で繰り返し、長め休憩を挟んで浜名湖SAよろしく、分岐の合流地点で再開してすぐに二人組のヒッチハイカーに話かけられた。
「あ、もしかしてヒッチハイクですか?」
「そうっすね(見れば分かるっしょ)」
「僕らもなんですよ」
「そうっすか、がんばりましょー(そうでしょうね)」
「チラシで、ですか?!?」
「そうっすね、チラシっすね(走行中に見える大きさの文字で、邪魔じゃなくて、少し先かその場に車の停まるスペースがあるところに立って、どこへ行きたいか、どうしたいか明確に書き、身なりを整え、でも結局は本当にただの運だから、上手く休憩を取りつつすればいいの!チラシとか関係ないの!)がんばりましょー(早くどっか行っておくれ)」
という感じで、非常に怠く、無益な数十秒を過ごした。
 ナメてる訳じゃなくて、乗せてくださる方はほとんどこっちとは無関係に乗せてくださる方と言っていいほどで、最低限のラインをクリアしていればあとはその日の運が全てで、やかましい、一人がスケッチブックを持ってもう一人はにこにこして横に立っているだけのお前らが何も口に出すんじゃない、それでもお前らの方が先に乗れることもあれば、僕たちが先に乗れることもあるし、お前らが明日の朝までかかることもあれば、僕たちが明日の朝までかかることもある。
 それで結局、極めて珍しいトラックに彼らは先に乗っていって、これだからヒッチハイクは面白いよなあとしみじみ思う。僕らより数メートル先に立つ彼らは第三レーンのトラックの運転手から遠くでも見やすくて、僕らは見えにくく、僕らがもっと長く休憩していたら、彼らが僕らの後ろの方で立っていたら、と無限に広がる。
  と考えていると滋賀ナンバーの車が過ぎ去っていって、ああ滋賀ナンバー、こんなとこでお目にかかれるとは、行ってしまわれたと思って、そうしたら助手席から下りてきた奥さんが、おいでー!と手招きしてくださり、少し話をして乗せていただけることになった。
「チラシで、ですか?!?」男たちとは数分の差で、トラックに乗っていたら辿り着かない場所まで行けることになり、やっぱりヒッチハイクは最低限のラインを超えてきちんとさえしていれば間違いは一つもない、間違いはお前らがしょうもないことを話しかけてきたことその一点のみ!と思い、物静かなお二人との会話を楽しんだ。
 しばらくして富士川SAに到着し、僕はご夫妻と離れて富士山でも見つめていようと歩き始めると「一緒にご飯食べようよ」と声をかけてくださり、僕は味噌ラーメンを、友人はつけ麺をご馳走になった。
 数時間前に食べた豚骨ラーメンより全てが染み込んで、些細なことで具合悪くなったり腹を立てたりする俺のようなちっぽけな人間に、こんな、こんな、どうしてこんなに優しくしてくださるのですか、と何かが込み上げかける。
  四人で富士山を眺めながら食事を摂り、再出発。駿河湾の横を走り抜け、写真を撮りつつで小笠PAにて小休憩。トイレから戻ると、何か飲み、と車内に買い貯めてあったお水をくださった。

 善意を断るのが合っているのか間違っているのか分からないので、浜名湖SAに到着してすぐにふらっと離れて歩き、煙草を吸いながら湖を眺めた。
 純粋に上手くいって欲しいという気持ちと、さっきのヒッチハイカーを上書きセーブで消したいと思い、途中で出会ったヒッチハイカーにちゃんとしたアドバイスをした。
 そうして敷地内を歩いていると(奥さん、に対して何と表すのが正しいのだろう)旦那さんと出会い「アイス食べる?」とサーティワンのアイスクリームをいただいた。丁寧な断り方というのを覚えた方がいいのだろうか、断ること全てが失礼に値すると考えてしまっているのは確かで、言ってくださった相手の何も損なわない断り方をいくつか学ばなくてはいけない。
 16時過ぎに米原駅に到着し、そこから電車に乗って、住んでいる町の最寄駅へ。

 次回もまた同じ友人とどこかへ行きたい。