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 親戚一同ががっかりしているように、自分自身、自身にがっかりしている、一体何をしてるのか、芸術一家でない彼ら彼女らの元から、芸術家が出現するのは一人なんじゃないかと全く無意味で無根拠なことを考えて、エレファントカシマシの『ガストロンジャー』によって、この音でこれ以上にカッコいい音楽って作れるのかな、と心が折れかけ、『覚醒(オマエに言った)』の中の『一人でいるときには 様々なことを考えようとしてる 偉大な人たちの考えを辿った気になって 俺の部屋には 理解を超えた本と虚しい気分が付き纏ってる 感じろ 思え 己自身の心でそんなこと お前に話した』とあって、ヤイ!ヤイ!ヤイ!って気分ですこぶる元気になり、俺は考えることも悩むこともできないでいることに驚く、23歳だぞ、おい!って感じ、びっくりするよな本当に、一つのことに集中しなさい、才能、というのは本当にあって、それは俺には欠片もないのに、それはもうとうの昔に分かっているのに、何故それでも一つのことを極めようとしないのか、どうしてあれもこれも、手を出すのか、中途半端だと映るぞ、賭けに出るにしても元手も勝算もないのに、ずっと何をしてるんだ、分析的に考えるということを習得しなさい、努力しなさい、練習しなさい、何が全部本番か、そんなことをするから何かあったときぼっこり凹むんだ、蓄積しないさい、溜め込みなさい、放出ばっかりしてないで、考えなさい、諦めなさい、とにかく毎日、すみませんでした、と思いながら生きていなさい、考えることを放棄しなさい、考え続けなさい、適当なことばかり言うのはやめよう、誠実さを養いなさい、理解しなさい、諦めなさい、死んでしまいなさい、生きるために必要な知恵をつけなさい、生き続けなさい、友と語り合いなさい、少数で集まってそれぞれの自身を開き示しなさい、何も決めないままでいなさい、生きていなさい、美味いもん食べて、美味い水を飲んで、馬鹿みたいに煙草を吸って、酒を飲まず、とにかく生きていなさい、死に急ぎなさい、大切な物事を見極めなさい、集中しなさい、考えなさい、ありあまる事象に飛び込みなさい、頭の中をひっくり返して、掘り起こして、削り出して、洗い流して、垂れ流して、蹴り起こしなさい、冷静でいなさい、頭ん中の文字を全部出しなさい、沈黙を貫きなさい、声を聞きなさい、翻訳しなさい、エピソードトークをしなさい、聞き流しなさい、語り口を得なさい、語るに足りる言葉を得なさい、体を開きなさい、徹底して自閉しなさい、歌いなさい、詩を書きなさい、正気を保ちなさい、夜空を見上げなさい、星の名前を覚えなさい、星座を知りなさい、自身の地図を書き出し続けなさい、船に乗って、俺と、波の頭、突堤の先に立って、灯台守は弁当を食べたあと、手を洗うために汀に立ち、遠く離れた対岸の灯台の先を見つめる、緑の明滅が彼を、波間に連れて、片時も忘れたことのない、乱立した木々のあいだに彼は立ち、小雨のなか歩き続ける、地図も杖もなく、彼はただ歩き続ける、踏み締める落葉の感触だけが確かで、誰一人として彼の名前を呼ばない、目が覚める前に、小屋のなかの机には彼が朝持ってきた小箱が載っているが、中にはどんぐりと紙片が入っているばかり、夕暮れの灯台は影になって、その眼をぱちぱちと、死んだ先代の灯台守は突堤の先に腰掛けて彼の名を呼んだか呼ばなかったか、静かな森を歩き続ける彼は頭の中でずっと鳴っているライトが回転する音を聞いている、聞き耳を立てる、それは声にはならない、決してならない、焼け野原のちょうど真ん中に立って、彼女は刈り取ったみたいに短くなった草たちの、その切り口をスニーカーの底でこすりながら歩いた、じゃくじゃくじゃくじゃくじゃくじゃくじゃくそれだけが辺りに響いて、彼女は息をしていなかったし、泳ぎ疲れていた、これから始まる、今夜始まる集まりに彼女は向かっている、スニーカーは煤で汚れて、靴下の中にまでほとんど灰になった草が入り込んでいる、突堤の先に立った灯台守は明くる日の朝食を思いながら、頭から海に飛び込んだ、飛び出した、海面が写真になって目の前に広がって、彼が着水するまでに海は三コマしか動かなかった、その初めから彼は自身の名前を持たず、名付ける人ももたなかった、煤だらけの格好で彼女は顔を出し、昨夜の煙の中に声を上げた、点滅した線路脇の灯、消した煙草から上がる煙、名前を呼ぶ声が聞こえる、波はいくつもの層で彼を覆い、彼はもうどこにもいなかった、初めからいなかった、小屋の中で彼女は木箱を持ち上げて振ってみた、先代の灯台守は海に溶けた、坂道の途中に開けた場所があって、そこには巨大な雪室、彼はそのなかに腰を下ろし、樹冠を見上げ、枯れ葉は穴の脇に溜まっていく、彼女の視線は、波の狭間に向けられ、数日のうちに白骨になった、彼はまだ森を歩き続けている、途切れない歩行、短い髪、覚えていない、河原に石が積まれている、撓んだロープが波を打つ、飛沫が目を痛め、擦った指が赤黒い、重ねて着たセーターを脱ぎ捨てて、彼は森の中を、さっきまで歩いていた道を外れて、獣道をつくる、小柄な猪が灯台守を見ている、彼が森に踏み入れてから今まで、ほつれたみたいな毛に包まれて、凝視する、男は葉が擦れ合う音を聞き、落ち葉の下の水溜りに落ちた、生温い水はありとあらゆる隙間から侵入する、猪は木の幹を抉り、目覚めた鳥は啄む動きを止める、漂う埃が重みを増して地表を覆う、辺り一面の焼けた土地でいつまでも舞っている、土を掘り起こすと湿った空気と虫たちが飛び出して、摘まれた芽が揺れている、小屋のなかには誰もおらず、建て付けの悪い扉が風に鳴らされている、足の爪の隙間に土が食い込む、忘れていたことを一つか二つ思い出した、ここは木々の種類が多いから迷いやすいのだと、じいちゃんが話していた、ダンドボロギグの綿毛が視界すべてを覆っている、舞ったそばからそれは意思を持って浮かび上がり、焼け野原を目指して風を探した、彼らは地表に降り立つと一斉に芽吹き、新たな集合をつくった、男は一際太い杉の木を右に曲がって、綿毛のなかを進み続ける、遊覧船は波を切り裂いて風を運んだ、小さな生き物は地中で沈黙を守り、ただ匂いを追い続けた、風の隙間に見える景色が放射状に散らばって、幻の中に確かな手触りを覚えた、目の奥に並んだ無数の球体の表面には小さな穴があり、覗き込むと体がひっくり返った、内と外が入れ替わり、鼠の群れとともに新たな餌場を探していた、穀物の甘い匂い、火を介さない香ばしい匂い、部屋中にきっちり満ちた香水の匂い、鼠たちは底を這い、名もなき虫を噛んだ、弾けるように味の横溢、豊かな色彩、戦友、有機物、天井裏の仕掛けをくぐり抜け、壁面を食い破る前歯、エナメル質が溶け出し歯を失った鼠は、餌場をうろつき、木片の罠をすり抜ける、武器をもたない鼠の勇ましいこと、ドレスの裾に泥が跳ねた、充足、殻の中に滑りこむ、濡れた腕に噛み付き、繋がりをもたない体は浮かび上がって散り散りに消えてなくなった、剃刀、狂乱、硬筆、魚、齧られたあと、毛虫、手のひらのダンゴムシ、洞窟の側面に群れなす甲虫、角をもたない動物、四肢の確かな動物、すでに死んでいる鼠を、彼らは我先にと貪り、ただ一人鼠の肉を喰らわなかった男は船室の隅で死んだ、腐った死体は穿たれた体を抱き、鼠は巣穴に引っ込んだまま出てこない、奥の方にうっすらと見える光源は暗転、客席に座る婦人は声を上げて笑い、望遠鏡から見える灯台のランプは青白く、燭台で殴打された男は頭の一部を失った、乾いた傷口を小指の爪で優しく掻き、至るその死に向けて、新しい一歩を踏み出した、彼は裸足で屋敷のなかを歩き、砂埃で黒くなった足の裏を召使に舐めさせた、牛乳に浸したパンを寝台の下に隠し込み、溶けた蝋を握って手を焼いた、脹脛の切り傷を勲章だと嘯き、夜な夜な痒み止めを塗り込んだ、頭の先から臍の下まで、刈り込んだ草が汗で濡れた体に張り付き、体臭と混ざり合う、水風船のように匂いが膜で覆われている、彼はそのまま女のもとへ忍び込み、斬首のち、晒され、陽光に唇を焼かれた、シーツに染みた汗の匂いは彼女を昂らせる、水辺に咲いた花の蜜と飛ぶ蜂は窓の隙間からその様子を逐一見ている、だらりと垂れた手足は硬質で、たっぷりとはち切れそうな腹を、女は親指と人差し指を使って捻り潰した、その指を舐めて、カーテンを閉めた、先頭に立つ男の頭は割れ、見たことがない故にその色味のリアルさに嘔吐する者は次々倒れていった、足の踏み場もない、死体だらけの原っぱに、長いあいだ土埃が舞っている、男は死肉を貪り、川の水を手のひらで掬って飲んだ、彼は誤って川に落ち、そのまま下流の溜まりに流れていった、そこには同じように死んでいった人たちの肉体が、朽ちることなく浮かんでいて、彼女はその風景を忘れていた、顔を出した彼女は痩せ細っていて、飯食ってんのか、と訊ねると、最近忙しくて、と言った、彼は、いくらでもいいから今日は食え、と言い、ありがとう、と彼女は答えたが、彼女は食べることができない、前髪の飾りは祖母のもので、祖母はもう死んでいない、死んでいなくなったものは物に宿らない、彼女は祖父が入院している病院へ行き、買ってきた果物をベッド脇の机の上に、静かに置いた、彼は何事かを叫びながらあたり構わず果物を投げた、林檎、洋梨、蜜柑、キウイ、一つは彼女の鼻に直撃し、一つは窓を割り、一つは駆けつけた看護師の肩に当たり、残りは全部壁に当たって潰れた、彼は最後の力を搾り尽くして死んでいき、あとに何一つとして残さなかった、彼女は祖父がいなかったとしても別の誰かの子として生まれていた、髪飾りは拭った手に触れて血で濁り、引き出しに仕舞い込まれた、男の割れた頭は、プラムのように瑞々しく、隊員はこぞって縁に口をつけ、最後の一滴まで啜った、伸び切った髭や髪が鮮やかな液体で濡れた、波の隙間でもがく灯台守は酸素を取り込もうと思い切り海水を吸い込んだ、彼は意識を失って水底へ落ちてゆく、先代の灯台守は水底で火を焚いて彼を待っていた、彼らは懐かしい話をし、棒に刺して焼いた魚を食べた、彼らはいつまでも話し続けた、日暮れはとうに過ぎている、代わる代わる話し始めるが、その話は同じ景色を別の言葉で説明し直しているだけだった、彼らは突堤の先に立って、対岸の暗い街並みを眺めている、あくる朝彼女は小屋を覗き込み、そのまま突堤の先まで歩いた、髪飾りを海に向かって放り、彼女自身も海へ飛び込んだ。