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 久々に前日に予定のないヒッチハイクがスタート。今回は以前に計画していた直島豊島を巡るための旅で、ここ最近の中でも特に期待値が高かった。

 昼過ぎから開始し、いつまで経っても慣れない感覚のなか1分もかからずに乗せていただけることになった。好きなカフェでよく使われている牛乳の営業職の方で軽い音楽の話や旅の予定などを話した。
 地図を見て一瞬「あれ?」と思ったものの、営業で高速をよく使うということと「そこからはいくつか行き方があって・・・」云々、信用してという言い方は烏滸がましいけれど、とにかく、地図が最新ではない可能性も考慮して、そこまで。

 昼食に中敷みたいな薄さのカツと何年振りだろってエビフライの定食を食べ、サービスエリアに住みたいという思いを強くした。

 14時過ぎに再開し何度かの休憩のあと、話しかけてくださった方がいて、彼の仰ることには「こっからだと、行けんこたないけどかなり可能性は低い」とのことで、それまでのたくさんの方々の反応を見るに間違いなくその通りで、どうしたもんかと喫煙所で聞き込みを行う。みな大体同じようなことを仰る。一度上りに移動して、スタート地点もしくはその次の良さそうな場所へ行けるかと粘るが、そこの雰囲気と一度よく分からないごちゃごちゃしたことで疲れてしまい下りへ戻る。

 しばらく続け、膀胱が破裂しそうだったので荷物もそのまま小走りでトイレへ。喫煙所の前を通りかかったとき「どこいくの」と声が聞こえ、ちょろっと話していると「多分そこまで行ったら先に進めるかも。少なくともここよりかは、どうとでもできる」と送ってくださることに。
 破裂しかけの膀胱のまま急いで乗り込み、以前勤めていた場所に忘れ物を取りに行く途中だという話を聞きながら「ああ、良かった、やっぱこういうことがあるからヒッチはやめられないなあ、おしっこしたいなあ」と考え、「荷物下ろして小走りでもなかったら声かけてないかもな」と仰るのに「ああ、良かった、やっぱこういうことがあるからヒッチはやめられないなあ、おしっこめちゃくちゃしたいなあ」と考え、数十分で目的地に到着。

 まずは膀胱を空っぽにして、すぐさま脱出し阪神三宮駅へ。

 19:27分発の電車に乗り大村駅へ。駅も辺りも暗いなか三木SAまで訳の分からない道を歩く。野犬か通り魔がいたら二ヶ月は見つからないタイプの道。

 20:40三木SAにてカツカレーを食べる。昼に食べたカツの四倍はある厚みに、疲れた身体が癒される。やっぱカレーっしょ。スタバでキャラメルスチーマーとスコーンを買って一服、少しやって駄目だったら早めに諦めて眠ろう、と開始十数分で乗せていただけた。和歌山から北九州まで帰省中のカップルで、今までのヒッチハイク旅のなか一番盛り上がった車内じゃないかと思うほど楽しんだ。喉がざりざりに。
 一時間半ほど後キャンディと鯛焼きを頂き、お二人と別れ、ぎりっと寂しい気持ちになる。おそらくもう一生会わないだろう。

 近くにテントを張って、すぐに寝ればいいのに二時間くらい無駄だけど楽しい時間を過ごし、就寝。

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 6時過ぎに起床。あんぱんせんべえを食べ、歩いて備前一宮駅へ。
 そこから10分ちょいくらい電車に乗って岡山駅へ。友人のシャグが切れたのでタバコマニアという店へ向かう。開店までの時間を懐かしい川縁で過ごし、開店時間を過ぎたばかりの店の前でぼんやり突っ立ってシャッターが上がるのを待つ。10分ほど遅れて店主の方が現れ「たばこ?」と道を挟んだ向こうから訊ねられ「はい!」と答え「ちょっと待ってねー」との声を聞き、道を渡る。マットを載せたリュックを店の前の邪魔にならなさそうなところに置いて店内を物色。入ってすぐ目についたペプシの灰皿と「タバコマニア」とプリントされたライターを白と黒一つずつ購入。三ヶ月くらいのあいだ八割方ペプシしか飲んでいなかったので運命すら感じつつ、旅中じゃないと買わないものだとも自覚する。

 岡山駅一番街の台湾甜商店という店で芋圓芋満足を食べる。珍しく友人が提案した店で、行くっきゃないねって気持ちの中、非常に好みの味でタイミングが合えば帰るまでにもう一度食べたいと思いながら、宇野駅へ向かう電車に乗り込む。

 11:45に宇野駅に到着しそのまま宇野港へ。12:05発の船に乗り、陽射しが暑い、風が冷たい、暑い、寒い、と言いながらもずっとデッキに出ていて、写真を撮りつつ楽しんだ。やはり船はいい。船やらサービスエリアやらの流動的なものが無性に好きだと再確認した。

 直島入島後、すぐさまミカヅキショウテンへ向かう。アイスカフェラテを注文し裏手のベンチで始まったばかりながら結構疲れている旅中はじめてのまったりした時間を過ごした。そこで昼休憩をされている女性の方と店主であろう男性の方が、今まで出会った店員の中で最もと言っていいくらい親切で衒いがなく、既に「また直島へ来よう」と決めていた。
 愛想があっても物凄く干渉してくる店員や、もうそれは無愛想なんじゃなくただの失礼だろって店員や、やたらめったら話しかけてくる店員や、ひけらかしに近い話をぽつぽつしてくる店員や、人それぞれだし店の色もあるけれど、そういった今まで出会ってきた「その位置俺と変わって」って店員はみなすべからくミカヅキショウテンの空気を味わって欲しい。
 接客の何もかもが気持ちよく、押し付けがましさは皆無で、振りまくような愛想ではなく、熱くも冷たくもなく、フラットで、きっと今までもずっとそうしてきたんだろうと思えて、きっとこれからもずっとそうしてたくさんの人を幸せな気持ちにするんだろうと思えて、涙ぐむ。
 そして肝心なコーヒーの味も最高ときて、これはもう常連になる意外いったいどんな道が残されているのでしょうか。

 それから大竹伸朗さんが手掛けたI♡銭湯へ。オープン直後の時間帯だからか、写真を撮る人やグッズを買う人は何人もいたけれど浴室は貸切で、二人でお湯の気持ち良さや偉大さを讃えた。

 それから宇野港へ戻り町営バスでつつじ荘まで揺られる。アップダウンの多い町を走るバスは酔う酔う。何とか引きずらない程度の車酔いで済んで良かった。

 シャトルバスに乗り換え、まずは地中美術館へ。ジェームズ・タレルの『オープン・スカイ』の中で静かに過ごせることが一番嬉しかった。21世紀美術館の方はあまりにうるさい。
『オープン・フィールド』の明らかに感覚が歪んでいく感触もおもしろかった。誰かの足のにおいが気になったけれど。
 モネの作品はまだピンとこない。スリッパ越しの床の感触が今までにないもので、そちらにばかり関心がいってしまった。
 ウォルター・デ・マリアの作品は部屋に入った瞬間笑ってしまうくらい荘厳で、寺社仏閣にいる時のような気持ちになって、気になる作家の一人になった。
 建物の構造と相俟って、だいたいどの作品も感覚が捻れていく。ただどれも重くなくて、さっぱり鮮やかに変わっていく、ような気がした。

 再びシャトルバスに乗りベネッセアートミュージアムへ移動した。割とさくさく見て回り、バスキアやトゥオンブリーやラウシェンヴァーグなどの気になった作品をもう一度見てから浜辺近くの野外展示がある場所へ下りた。

 撮り歩きつつ桟橋の先で一服し、もう最高に達している旅をぼんやり振り返りながら、晩御飯晩御飯晩御飯と思いながらバスを待った。
 シャトルバスと徒歩で、らうめん積、という店へ。満席だったけれど、普段は絶対待たないけれど、空腹度合いと飲食店の少なさから、煙草を吸い続けて待つことに。しばらくして「相席でいいなら空いてるよ」との言葉で席に座り、チャーシューメンと唐揚げのセットを注文。とにかく忙しそうで、見ていて少し心配になる。そのペース五日も保たなくない?と思いながら、漫画を読んだり相席した地元の方と話したりして待ち時間を潰す。ラーメンも唐揚げも美味くて、ありとあらゆる所が満たされる

 待つよりも歩いた方が早いと宮浦港まで歩く。途中でセブンに寄ってガムと水を買い、浜辺にテントを張った。

 潮の満ち引きを恐れつつ眠り、3時過ぎに耳栓越しにも分かる近くの波の音で目を覚ます。友人を起こして急ぎで場所を移す。落ち着いてから自販機まで歩いてテントに戻り、割と早く眠りに落ちた。

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 6:30、波に攫われる夢を見て目覚める。友人を起こさぬよう用意を済ませテントを出る。

 散歩がてら撮り歩きつつ、朝の光の中でみる海の色に震える。昼間に見たときも「いい色だなあ」と思ったけれど、朝はまた違っていて「この色で絵を描きたいな」とか「この海を見て感じたことを何かに現すことは本当にできるんだろうか」などと考えながらアカイトコーヒーへ。
 ピザトーストとカフェオレを注文し、店内の本棚を物色する。村上春樹や松浦弥太郎、保坂和志、片岡義男など好きな作家が多く、そこから派生して名前だけ見聞きしたことのある作家も多く、店主を信頼し、片岡義男一冊、武田百合子一冊、あと誰か一冊を手に取り席へ戻ろうとして、後ろに単行本の棚があることにようやく気付く。
 結果的に絲山秋子の『袋小路の男』だけを手に持って席についた。調べてみるとWikipediaには『村上春樹を駆逐する存在になるのではないか』とあって「そういう繋がり方するかあ、いいじゃんいいじゃーん」と思いながら、アルヴァブレンドで淹れて頂いたホットカフェオレとピザトーストを楽しむ。
 ガトーショコラを食べながら本をちらちら読んで、楽しみに取っておこうと閉じ、会計を済ませた。

 テントに戻る途中で、まだ閉まっているはずのミカヅキショウテンの扉が開いていたので「飲めたらラッキー」くらいのつもりで「開いてますか?」と入店。先客が二名おり、ホットカフェラテも無事に注文できた。
 これから行く豊島について五人で話し、悪夢で目覚めたけれど早起きして本当に良かったね俺、と思いながら、旅おもろ、とにやけた。店主の方にも「早起きして良かったね」と言われた。
 豊島美術館について、先客のうちの一人の方が「ここへ行った後では、人生がまったく変わる。涙が出るよ、何時間でもいれる」と仰っていた。もう一人の方はiPhoneの写真を見せてくださり「豊島美術館に行ったら、この猫に会ってきてください」と仰っていた。
 コーヒーを飲みながら良い時間を過ごした余韻のなかテントへ戻る。起きていた友人と片付けを済ませ始発のフェリーで豊島へ。

 土産屋に寄ってからシャトルバスに乗り、豊島美術館へ。まわりの景色の豊かさや外国人観光客の持っているカメラのハイスペックさに驚きながら入館。
 地中美術館もベネッセアートミュージアムも豊島美術館もカウンターの中の方の対応が素晴らしくて、いちいち「いいなあ」と思ってしまう。

 スロープを歩き、『母型』の中へ。何かを祝福されているような許されているような気になる。底面から出てくる水の動きや小さな音が反響して変わった聞こえ方になることや大きな穴のあいだで揺れる白い細い線の翻りやその影や、そのどれもひと時も同じでなくて、だけどそれぞれがあらわしていることは一つのように感じ、本当に何時間でもいられる思いつつ、歩き回ったり天井の低いところに座ったり影に座り込んだり、陽の光と影に半分ずつ浸ったり、心地好い物足りなさを味わいながら、カフェのある建物へ移動した。
 オリーブライスとアイスカフェラテを頼み、席に座ってぼーっと過ごした。よく分からない味だけど美味しかった。
 芝生に座っていると「会ってきてください」と言われた猫がいて、一人一人に挨拶するように撫でられにうろうろしていた。僕のところにも一瞬来て、それからちょろっと歩いて、三角座りしている足の下に潜り込んで来てくれた。猫も陽の光と影のなかに浸っていて、こんなに可愛くて柔らかい尊い生き物がなぜ死んでしまうんだろう、と意味の通っていないことを思った。でも本当に、そう思う。

 すぐ近くに停まっているフードトラックでマルゲリータを買い、素晴らしい眺めのなかで食べる。美味いなあ、素晴らしいなあと言い合い、すぐさま食べ終える。

 歩いて唐櫃港まで行き、浜辺で焚き火をしてバスが出る時間を待つ。
 一時間くらいしてバスに乗り、森万里子作品前で下車しmammaへ。銭湯だけ利用するつもりで来たのだけど、時間と身体の疲れ方からゆっくりすることにしてカフェスペースへ。
 温かいカフェオレとフライドポテトを頼み『袋小路の男』を読む。なぜか目頭が熱くなる。かなりゆったりして身体の緊張を抜ききった。次回豊島へ訪れる際はここに泊まりたい。

 歩いて家浦港へ。時間があまりないが撮り歩きつつ、素晴らしい旅やったなー、まったく同じ行程でもいいからまた来たい、と話しつつ到着。
 終発の船に乗り二日ぶりの宇野港へ。大阪屋食堂で魚定食を貪ろうと思っていたけれど満席で、待つ時間も余裕もなく近くの札幌ラーメンで塩バターラーメンを啜る。めちゃくちゃ美味い。美味いけれど、美味いが故に次回は別の味を試したい。

 UNO PORT INNのカフェスペースへ行き、ホットのカフェラテを注文。マシンの清掃作業に入りかけていたらしく「飲みたい?」とバリスタの方に問われた。「はい!飲みたいっす!」と言ってスリーショット入ったカフェラテを受け取り「ありがとうございます。いただきます」と過剰に伝え、テラスで煙草とともに摂取。美味しいしバリスタの方も店員も気持ちよくて、もうなんて楽しい旅なのーとまたぐぐっと涙ぐむ。
 帰り際もお礼を言って岡山駅へ向かう電車に乗った。到着後、次の電車まで30分くらいあったので何となく再びタバコマニアへ。
 世間話をし、少し打ち解けた気もしつつ、今回の旅で出会って話をした人みんな、どうしてこうも気持ちの良い人ばかりなんだろうかと感動し、岡山へ来たらまた必ずタバコマニアへ来よう、と決意した。

 備前一宮駅まで揺られ暗がりを歩き到着。椅子で仮眠。

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 8時頃から開始し昼前には乗せていただける。雨が本降りになる前で救われた気持ちになる。
 目的地とは違った場所に下り朝昼兼用の食事にケバブライスと柿の葉寿司を摂る。鯖、秋刀魚、鯛、穴子。

 本格的に降り始めた雨の中再開。二時間経たないうちに岐阜へ帰られる夫婦に乗せていただけた。飴玉をいくつか頂き、四日間でズタズタになった喉を労わる。

 到着、電車に乗り込み自宅近くの駅で解散。

 本屋を見てから行きつけの喫茶店で旅の終わりを確認する。ここ最近の旅の終わりはここで迎えているので今回もここに来て初めて「帰ってきたー」という感覚を覚える。

 まだこの後もしばらく旅が控えていて、恐ろしさと早く来てくれないかなってわくわくで体が揺れる。

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