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 小学生の頃に仲良かった友達、家に三〇泊三十一日くらいした友達との遊びを思い返すと、どうして年々演技や映画への関心が高まっているのか、分かるような気もするが、その実まったく関係ないのかもしれない、それでその遊びというのは、二人で朝から夕方までずっと入れ替わり立ち代わり何役も演じて物語を進めるというので、脚本はなく関係図みたいのがあって、そこにそれぞれ誰を演じるのかという割り振りが書いてあって、それをたまに見ながら飽きずに続け、たまに、あらぬ方向へ進んでいった話に二人して泣いたりしたことを思い出す、なーんだ昔からそういうの好きなんじゃーんと思いつつ、だから年々演技や映画への関心が高まっているのかと考えると全く分からない。
 七畳あるかないかの空間にロフトベットがあって、その横や上の空間を薄い毛布やらで区切って秘密基地と称したり、勉強机の下にライトやら衝立やらを持ち込んでこれこそが我が部屋と称したり、そのような元々ある空間を縮めたり広げたり、縮めて総量として広く感じたり、広げて総量として狭く感じたり、そういうのが好きだということと、三〇泊三十一日坊やとの二人芝居のようなものは繋がっているような気がした、狭苦しい部屋は我々が何処何処だと設定した空間に瞬時に変わって我々が演じる何者かはその空間を無尽に動き回っているその感じ、ロフトから飛び降りるその距離が膨れあがるその感じ、壁と壁の隙間の薄暗い空間がアジトに変わるその感じ、その感じが近しいように思えて、バンドで楽器を弾いて歌っているときに体の少し先まで意識が飛んでいくその感じ、物を椅子の隙間に落としてコツンと当たった感触が指先に現れるその感じ、セックスで相手の快楽や昂りを己のものとして知覚するその感じ、本を読んでいて分断された意識がどちらとも覚醒しているその感じ、音楽を聴いていて浮かぶ何かに皮膚が反応するその感じ、一体なんの話?
 とにかく、肉体から「最早物理的に離れてると言っても過言でない」と一応確実に過言な冗談が言えるくらい、肉体と何かが離れていく、空間の伸び縮みを肉体で左右する、伸び縮んだ空間で肉体から離れた何かが蠢きまわるようなことが垂涎してしまうほど好きで、きっとそういった現象を見ることも好きで、だから映画を観るのが好きなんじゃないかと思いついて、結局よく分からないし、だったら何がどうなっていればそういうことなのかも、あんまり分からない、推測でしかなく、推想でしかない。評価はC +。推測の域を出ていない。はーはっはっははっはっはっバッカみてえ!

 この数日ぼぼぼぼぼって気分で、気になるけれど些細なことが手につきづらく、一体全体ここはどこだろうかという気持ちで、ほとんど確実に現実逃避として幾つかの物事にのめり込んでいるが、そのような愚にもつかぬファックな心理学的思考に陥ってしまうのは大変よろしくなく、目標や大義名分やゴールや理想などを設定するファッキナァスホールな入れ知恵的思考に陥ってしまうのは大変よろしくなく、ぼぼぼぼぼなまま己の尊厳を己で守り、慇懃無礼にならず、素直に、心楽しく、まあまあ健やかに、洞穴の奥深くで霜や小動物を喰らい、腰高の焚き火に手をかざし、フジツボ取りで濡れた体を乾かし、おそらく食べられる魚取りで濡れた体を暖め、己の価値を己の好きなもので定めず計らず、視覚野や声帯や口角、頬や首筋やこめかみ、腹部を痛めつつ話し込み、硬く尖った枝に刺して焼いた名も知らぬ魚の腹に噛みつき、足元の石ころを洞穴の奥の暗がりに投げ込み痛んだ肩を揉み、揺れる地面に耳をつけて音を聞けばそれは声で、ようよう生きよう、そう聞こえて、ぼぼぼぼぼっと聞こえて、穴のあきかけた鍋で煮たフジツボを一口食べて吐き出した、地面はまだ揺れている、ずいぶん遠くのほうに鬼火が見える、それはこの洞穴へ近付いてくる、声と一緒に、音楽と一緒に近付いてくる、祭囃子のように聞こえるが、それは祭囃子ではなく、ただの音楽で、その音に合わせて焚き火が揺れている、鬼火はどんどんこちらへ近付いてくる、音楽は鳴り響いているが洞穴の壁面にその音はぶつからない、その少し手前で途切れ丸くなっている、耳の奥のほうまで入り込んでいる、壁面は濡れている、鬼火は洞穴の入り口まで来ている、焚き火はまだ踊っている、音楽は鳴り止まないし小さくも大きくもならない、フジツボの汁は蒸発して焚火に照らされた天井部がぬらりと光っている、それは月光で、限りなく満月に近い三日月で、鬼火は目の前に浮かんでいる、青い、青い、揺れ方が焚き火とは違っている、目の奥に緑と紫の光が交互に現れて消える、焚き火が消えた、鬼火はまだ揺れ残っていて、しかし何も照らさない、ふちの外側は洞穴の闇で、月光は届かない、青い、右の手のひらが熱い、鬼火は洞穴の奥へとゆるゆると進んでいく、立ち上がってあとを追うが、知らない横道を選んで進んでいく、真円に近い空間に何度か出た、ひとつは一面に濃い色の苔が生えている場所で、植物の名前が呼ばれていた、植物たちはどこからか吹く風に揺れていた、鬼火は一度も立ち止まることなく進んでいった、ひとつは花の名前が定められる場所で、そこで花々は名を付けられていた、鬼火は桃色の花を全て焼いた、滝のそばを通ると霧のようになった水滴が頬にあたって鼻や耳の穴のふちが濡れた、鬼火は洞穴の最奥を目指しているのだと気がついた、鬼火が気がついて、それに気がついた、進んでいくほどに月光が強く足元を照らした、風が上部から渦を巻いて吹いている、鬼火はその風では揺れない、青い、最奥の空間、楕円形の吹き抜けた空間に着いた、鬼火はその空間を壁に沿って何度か回ってから消えた、ここはどこだろうか。

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